今のワカモノどもは、駅前の掲示板を知っておるであろうか。シティハンター冴羽獠にちゃんと依頼する事ができるか、心配である。

掲示板と言っても、匿名で犯行予告を書き込むアレではないぞ。ちゃんとリアルな世界にあるのだぜ?
名前、時刻および連絡を黒板に残す事ができたアレである。

今のワカモノどもは、多人数の飲み会を突発的に開催するのには、どんな連絡方法を使っているのであろうか。ケータイmailを流して一発だな。もはや若くない俺だってそうしている。便利だよな。あれは。

ケータイが無い世界で、我々のサークルは(もちろん他の複数のサークルも)、駅前掲示板を使っていた。駅前掲示板って実用されていたのだぜ?

授業が終わって、バイトが終わって、研究室から解放されて。サークル会室や部室に顔を出しますな。しかし誰もいない。どうやら既に街に繰り出してしまったようだ。
そんな時は。とりあえず駅前にだらだらと繰り出すのだよ。私学の、しかも強烈な個性をもつ大規模大学の地元駅前。それわそれわ。見事なカオスであった。他大学の地元駅前には見られない人種も多数、出現していたな。バカでかいザックを背負った集団やら、ツナギの集団やら。

この人ごみで、仲間を見つけるのは至難。そこで、駅前掲示板の出番なのだ。XYZはさすがに使っていなかったが、サークルの略称と行きつけの個人経営の小さな飲み屋の略称は、暗号になっていたな。

XXX(サークル名)、KK(飲み屋)、1800X6。(訳: 18時からKKで6人で飲んでるぜ!)

入学したばかりの1年生、1人で小さな飲み屋に向かう昂揚感は異常。本当に、仲間や先輩達は居るだろうか? 居なかったらどうしようか?

店の暖簾をくぐった瞬間に。駆けつけ!のコール。頼もしい博士課程の院生の先輩を中心に、集団は9人に増えていた。

ケータイが出現し、駅前掲示板が完全に根絶やしにされた年。同級生は全て卒業した。俺は、まだ学生時代の半分をようやく終わった所だったな。