渋谷系」「新宿系」という90年代後半の音楽界の言葉をご存
じだろうか。
詳しくはぐぐってほしいが、このうち「新宿系」を名乗ったの
椎名林檎であった。


椎名林檎の1stアルバム「無罪モラトリアム」。
このアルバムの楽曲は「田舎もんが東京に出てきた」感があり
、実にいい。
御茶ノ水」「丸ノ内」「歌舞伎町」「後楽園」などなど。
東京の地名がどんどん出てきて、僕にとっての「東京」は椎名
林檎の楽曲とともにあった。


初めてきちんと東京を歩いたのが25歳の時。
生まれも育ちも大都会(の下町)の私だが、
まず建物の高さに度肝を抜かれてしまった。


それまで、大自然を体感する機会はかなりあった。
西表島でカメレオンやマングローブを見たこともあるし、
日本アルプスのブナの樹海を歩き回ったこともあった。


しかし…そういった自然体験より、あの建物のデカさの方に僕
は感動した。
自分は田んぼ一つない都会で育った。
高層ビルが立ち並ぶ場所で、狭い空を見て育った。
「都会人」という強固なアイデンティティが自分にはあった。
…はずだった。


でも。あの。東京の。高層ビル。
「勝てない」
一目見てそう思った。


「王将」の世界なら通天閣を見て闘志を燃やさねばならないの
だが。
僕はあっさり白旗を揚げた。


大学の同期も、仲の良かった5人のうち3人が関東勤務だ。
ヒト・モノ・カネ、それがどんどん集まるのが東京。
名古屋のがんばりもあり、大阪はどんどん先細っている。


悲しくはない。
「2番じゃだめなんですか」と言った議員がいた。
そうだな。大阪は、2番でいい。


満員電車も、常識の範囲内の混み具合だし。
日本橋も、アキバに比べるとはるかに歩きやすく買い物しやす
い。
治安が悪いのが気になるが、被害にあったのは30年近く生きて
きて2回だけ。
なんら問題ない。


東京で数日のホテル暮らしを、年に1〜2回する。
オフ会が主な目的。
でも、「ナンバー1体験」できることも嬉しかったりする。
スネ夫?虎の威を借る狐?ああ、その通りだ。


これからも僕は、かりそめの満足感のために、東京に通うだろ
う。