はむの出身は北海道である。
とはいえ、一言に北海道といっても地域によって気候がずいぶんと違うのであ
る。まあそんな話。

1997年ぐらいのことだったか。学部生時代、アルバイトの関係で僕は「くしろ港
まつり」というお祭りにお邪魔した。夏の盛りに釧路市で行われるお祭りであ
り、「♪みなと釧路は日本一!」とかいう妙に脱力感が残る盆踊りの歌を、耳に
インプリントされるほどに聴くことになったりする。
そしてもちろん、たくさんの浴衣姿の女の子が、楽しげに小さな街に繰り出して
いる。肌が色白でかわいい。
・・・うむ、いい。実にいい。

さて、そんな女の子たちをみていたはむの服装はと言うと、下はぼろいジー
ズ、上はシャツの上に長袖のポロシャツ、トレーナー、更にその上にバイト先の
ロゴが入ったウィンドブレーカー。
僕はそのとき、別に風邪をひいていたとかそういうのではない。寒かったのであ
る、猛烈に。

気温、摂氏14℃。夏真っ盛りにこの温度。オソルベシ東端!天然クーラーの効き
過ぎにも程があるだろう。北海道とはいえ、札幌の感覚からしても夏の盛りにそ
れはナシなのではないだろうか。
しかし女の子たちはさも普通そうに、何か羽織るわけでもなく、薄い浴衣を着こ
なし楽しげにしているのだ。
シュールだ。なんとなく「ガンバレ」と言う届かぬフレーズも浮かんでくる。浴
衣着用における北限地の有り様を見た気がした。