秋刀魚である。季節感満点の話題ですね。本当にすみません。人様からお預かりしている原稿を寝かしてしまうとは。へんしう長としてと言うより人として失格です。すみませんすみません。

秋刀魚である。ご多分にも漏れず、わたしも大好きだ。マグロの大トロなんぞよりもずっと美味しいと思う。
酷暑によって、痛めつけられ干された9月の体。そんな時に輝かしく奴らはやってくる。牛の脂を摂取する力が胃袋に残っていなくても。奴らの脂は滋養に満ちてするするとしみ込んでくる。
こんがり皮付きの身の部分:ビターでコクのある肝:大根おろしの比率は、6:2:2だ。守るように! 異論は認める。そして、酢橘と醤油をそれぞれワンドロップ。守るように! 異論は認める。

む、なんかいろいろな声が聞こえてくる気がするぞ。何、なんだと、肝は苦くて気持ち悪いから食べないだと(お子様めっ)? 塩焼きのパリパリ感が、果汁と大根で死ぬだと? だから異論は認めるよ。何せ、奴らの塩焼きの食べ方の流派は、目玉焼きの食べ方並に多彩だからな・・・。

マスタしておくと、男やら女やらが上がる(かもしれない)技もあるな。首根っこのあたり(首あるんかよ!)をぐいっと押さえつけて、イッキに背骨を抜き取るヤツな。あれはいいぞ。涼しい顔で一発ギメしてみなさい。シャンパンのコルク抑えでイスを作ったり、下手な手品よりはずっといい・・・と思うんだけど。

奴らからのボールを受け取る女房役も、流派があるな。俺はがっしりと重い重爆撃機、シメイビールのブルーだ。アルコール度数は10%前後ある。逆に超軽量戦闘機のハワイビール、プリモで脂を流すのもアリだな。
日本酒は識者に譲ろう。酒だけじゃない。固めに炊いた白飯の上に、上記の黄金比率を守った奴らの塩焼きを乗せて、カキコムのも素晴らしいぞ。さらに騙されたと思ってライ麦パンに乗せてみなさい!

9月の末だった思う。まだ俺が本当に若かったころ。高知県をオフロードバイクで例によって野宿旅していた。四万十川の河原で、黄金比率の奴ら+白飯をシェラカップにてんこ盛りにして、ビールで流し込んでいた。信じられないことだが、隣には妙齢の女性X2がいて同じものを食していた。カヌー乗りの二人組だった。俺の「必殺食」で彼女たちは天国に逝ったようだった。ククク。

食べ終わって彼女たちはにこやかに笑うとこう言った。

猫飯、ご馳走さまでした!」

俺は、三次元オンナの恐ろしさを。ほんの少し垣間見た。