言わずと知れた日本の首都である。大都会である。
私が初めて東京に乗り込んだのは、
まだピッチピチの女子高校生(ただし"田舎の"という枕詞が付く)だった時である。
そう、今は懐かしい大学受験の為であった。
当時ひと足早く都会の大学生となっていた兄宅に宿泊すべく、
東京都をほぼ横断することとなった(田舎の)女子高校生のびさん。
正月に帰省していた兄から
・新幹線を降りたら中央線に乗れ
・中央線はオレンジの電車だからな
・新宿で降りて京王線京王八王子行きに乗れ
・新宿では駅構内にちゃんと書いてあるから、"京王線"の矢印の通りに進め
聖蹟桜ヶ丘で降りて○口に出て、あー行ってこー行ったらウチだから
・とにかく、新幹線降りたらオレンジの電車に乗れ
という懇切丁寧なレクチャーを受け、単身乗り込んだのである。

「兄は東京駅まで迎えに来てくれなかったのか?」
と疑問に思われる読者様もおられよう。

兄はその時なにをしていたのか?

運転免許を取る為に、北国で合宿していたのである。大学生の醍醐味だ。


さて、難なく無事に無人の兄宅へ辿り着いた(田舎の)女子高校生のびさん。
まずはお茶でも頂こうかね、と電気ポットでお湯を沸かし、
そこらに置いてあったティーバッグで紅茶を淹れてみた。

なんかマズイ…。

ティーバッグの賞味期限は問題ない。でも何かマズイのである。
いま思えば、それは水道水に含まれる塩素の仕業であろうと思われるのだが、
当時の私には知る由も無かった。
これが一発目の、都会の洗礼だ。
そしてその約1週間後、都会の洗礼を本格的にお見舞いされる事になるのである。


その日は受験の最終日。
それまでに受けた大学の会場までは、途中で乗り換えなければならなかった。
都会の通勤ラッシュは恐ろしいと聞く。
骨折する人もいるらしい。電車に乗っているだけなのに!?
降りるべき駅で降りられなくなるかもしれない。ここは時間に余裕をもって、
各駅停車に乗って行こう。
しかも先頭もしくは最後尾車両に乗るべし!との父のアドバイスに従っていた。
が、この最終日は終点の新宿で乗り換えるので、どんな事があっても降りられるだろ
うとタカをくくった(田舎の)女子高校生のびさん。
よりにもよって通勤快速に乗ってしまったのである。
サラリーマンに人気の5本指ソックスではない。それは通勤快足だ。
アホにも程があるだろう?!>ピッチピチ女子高校生のヲレ。

案の定、


死ぬかと思った。


自分の肋骨が軋む音を、私は確かに聞いた。
ほうほうの体で終点新宿に辿り着いた(田舎の)女子高校生のびさん。
いや、人波に押し出されたと言っても良いだろう。
さぁ、気を取り直して乗り換えだ。


へ?

ココハドコ??

......


初日に乗り込んだ景色とは全く違っていた。
少しでも混雑を避けようと、先頭車両に乗ったが為に起こった事態である。
(恐らく)ルミネの中に迷い込んだのだ。
とりあえず人波に乗って、「JR」という表示を見つけねば。


どうやって乗り換えたのかは記憶にないが、ともかく開始時間前には試験会場に辿り
着いた。
兄宅を出た際に、近くのコンビニで買っておいた昼はん用のおにぎりには、
しっかりと手すりの型押しがされていた。明太子おにぎりだった。