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産まれてこのかた、「月見」というものをしたことがない。
家という空間に暮らしたことがなく、賃貸マンションの小さなベランダからは、月など見上げる事も出来なかったからだ。
子供の頃は、あの「月見」セットに憧れた。
なんだか神聖な儀式のような、あの「月見」セットを飾りたくて親に頼み込んだ事もある。
交渉の結果、なんとか月見団子だけ買ってもらえる事になり、喜びいさんで口にしたものの、味もそっけもないただの白い固まりに、子供の私はガッカリした事を覚えている。
以来「月見」に興味を持たなくなり、気づけば30年近い月日が流れていた。
その間の私にとっての「月見」とは、蕎麦かウドンでしかない。
天空の月を愛でる事なく、蕎麦かウドンに浮かんだ月を眺め、食す。
それもまた良し。
今ヘタに「月見」なんかしたら、ウツに陥りそうだしな。(苦笑)
もう少し、後の楽しみに取っておきますかね。「月見」